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日清戦争1

 23, 2017 06:52
 船を乗り継いで李氏朝鮮の首都漢城府、今のソウルに着いた。伯爵と総司は日本の官僚が泊まっているホテルに入った。私は外国の記者が多く泊まっている近くのホテルに泊まった。私には現地の新聞社と提携している新聞社から李という少女を付けてくれた。彼女はホテルの給仕で日本語や英語が会話程度できるようだった。
「仕事はいいのか?」
「食堂の給仕や荷物の運搬や新聞の配達やらいろいろやる」
「歳は?」
「17歳」
 総司と同い年だ。
「お金は貰っている。あなたも記者?」
「見習いみたいなものだ。さっそくこのホテルに案内してくれないか?」
 こくりと頷くと騒々しい街中を歩く。立派なホテルが立っていて彼女が指を指す。
「ここは外国の要人が泊まる」
と言って中に入っていく。すでに着いていたらしく伯爵がソファにかけている。総司が窓の外を見ている。剣を差せないから仕込み杖にしている。
「今日はいい。呼ぶのはどうしたらいいのか?」
「食堂に来てください」
と言うと駈けだしていく。
「鼠も総司もこれから食事に行く」
 馬車が迎えに来て立派な中華料理店に入る。日本の外交官らしい。伯爵も参与だ。私と総司は一般の円形のテーブルに座る。
「やはり同じベットで寝る?」
「そんな馬鹿な。大きなベットの隅に補助ベットが置かれている。私向こうでも海外は初めて」
 どこまで総司は向こうのことを覚えているのだろう。





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生活20

 22, 2017 07:00
 室長は体調不良で休んでいる。それで室長のパソコンからUSBで彼の調査の一部を抜き取った。ここには本社の役員の個人情報が集められている。もちろん代取会長のファイルもある。72歳の会長は今は独身で5か所の女性のマンションを地球のように回っている。だが今更女性ネタでは駄目だ。
 これだと思ってこのファイルを選んだ。彼は今でも政治担当を統括している。今回の不良債権を作ったのは͡この会長の指示だ。分からなかったはずだ。彼はこういう金を作っては歴代の総理大臣を作ってきた。このUSBを3日掛けて分析した。この金が10億ほど前回の総裁選に流れていた。だがまだ東に渡す気にならない。
「今日も?」
 お局が室長の代わりになったように言う。
「不良債権の調査だよ」
と言って時計を気にして外に出る。
 2時に銀行前でおばさんと待ち合わせだ。おばさんは珍しく化粧をしている。銀行の玄関に入るとあの担当が応接室に案内する。すぐにあの課長が来て、
「確認をしましたよ。ご本人ですね?」
「はい」
 おばさんが緊張して答える。
「彼は?」
「娘の婚約者です」
 後は用紙にサインとハンコをたくさん押して銀行を出る。
「夢のようだわ」
 それだけ言って店に戻る。総司がビールの空き瓶を運んでいる。おばさんは急いで中に入ってく。
「今度朝鮮に行くことになったんだよ」
「私も一緒?」
「もちろんだ」









生活19

 21, 2017 06:25
 伯爵の根回しで私は新聞社派遣記者で、伯爵は参与の視察として、その警護で総司が付くことになった。執事の孫六は傷をこじらせて歩けない。すでに伊藤博文は2次内閣を開いた。
 今夜は一葉と一が居酒屋で送別会を開いてくれる。すでに一も一葉も総司が女だと知っている。だが鈍いのか伯爵は総司を男だと思っている。それで船旅は同じ1等客船に同室する。
「困ったね?」
 一葉が慰める。
「もう立たないから安心だけど」
「いやまだ立つ」
 私は否定する。それは朝鮮に行ってまだたかを抱く気でいるからだ。新聞社の調べではたか達も今は朝鮮に集まっているということだ。
「清のような大国と戦争することはないでしょうね?」
「それは分かりません」
 私は否定した。新聞社の調査では清はもうぼろぼろの大国というのだ。現在玄道がそれを連載しているのだ。
「たかも来てるって?」
「ああ、それは確認した」
 その夜は屋敷に戻ると孫六が伯爵が帰らないことを告げた。吉原に泊まるそうだ。総司は新しい敷布を持ってきて書斎のベットに敷いた。
「向こうで戦争が起これば死んじゃうね?」
「ああ」
「2人が死んだら母だけが残されるの?」
 最近は向こうのことも分かるようだ。
「それも分からない。でも離れ離れにはならないと思う」











生活18

 20, 2017 06:53
 伯爵の人力車が襲われて執事の孫六が怪我をした。それで今日は総司と私が地下道を警備して皇居に向かった。総司は井戸に残り小屋になった井戸の出口を伯爵と出る。侍従長が待っていてくれて執務室に入る。
「どうだ清の様子を調べてか?」
「はい。伊藤の意を受けて軍隊も外交官もスパイも動いています」
「まだ日本を固める時期なのだ」
「黒田内閣も長くは持ちこたえないようです。伊藤がしっかり地盤を作っています」
「板倉達は?」
「まだ力がありません。大陸は何かが今起これば戦争に発展します」
「伯爵が出かけることはできないのか?」
 侍従長が入ってきて天皇に耳打ちする。
「伯爵が来ていると知られたみたいだな?そこまで伊藤が来ている」
と言うと部屋を出て行った。
「伊藤は殺す気はないのだ。動きを止めたいのだ」
「なぜですか?」
「彼は今が日本が大国になるチャンスだと思っている。今までは岩倉達は政権を守ることに精一杯だったのだ。だが伊藤はその先を見ている。いいのかどうか私も分からぬ」
 井戸に戻ると総司が走ってくる。
「しばらく地下道にいてください」
「どうした?」
 警察が屋敷に踏み込んでいるようです。
「いよいよ行くしかなくなりそうだ」
「総司を連れて行きます」







生活17

 19, 2017 06:55
 室長と担当役員が減給の処分を受けた。結局不良債権は会社が貸し付けを受けることで片付いた。これも形式だ。それで朝から室長は機嫌が悪い。もし報告書に私の名前もあれば同じ処分を受けていただろう。銀行で預金証明を作ると送付した。この金は架空の会社から貸し付けを受けた形にした。
「待っていたわ」
 東から連絡があったのだ。心斎橋と銀座の間にあるカフェだ。私は覚悟していて直帰を記入している。
「心配しなくていいわ。今日は抱く話じゃないわ」
 図星を指された。
「総司と一緒に住んでいるのでしょう?」
 東はコピーを出して見せる。これは私の生き残った会社の会長だ。
「彼は72歳、5代目よ。まだ代取会長で院政を引いている。大変な女好きで今でも立つのよ」
「寝たのか?」
「だがケチで有名よ。私のところにつけが前のオーナーの頃から2000万もあるの。調べて見たら銀座のクラブで1億もある」
「何をする?」
「会長の公な弱みを調べてほしいのよ。もちろん別枠よ」
 東と別れえると電車に乗った。夕方から雨が降っている。こういう日は客が少ない。暖簾を潜ると総司一人がカウンターにいる。
「お母さんは?」
「腰痛で病院に行っている」
「手伝うよ」
「いいよ。今日は少ないから」
「おでんを入れてくれ?」
「ここ出て行かないと駄目なんでしょ?」
「いや何とかする」












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