夢の橋 - トップページ

夢の橋15

 08, 2017 06:59
 もはやお局も平社員だから直帰には気を使わない。タクシーに乗って夕暮れの街の中を走る。タクシーがネオン街の細い道を抜ける。用心のため何度か細い道に入ってもらい尾行を確認した。花屋敷から入ってここは吉原の一番外れだ。
「この辺りですね?」
 運転手に言われてタクシーを降りる。この辺りは昔風の小さなソープが並んでいる。細い路地に入って渡された店の名を見つけた。ここは呼び込みもいない。中に入って声をかける。
「乾さんですか?」
 やり手婆が顔を出す。答えると、
「ここは一番端にあるんで常連客しか来ない。お抱えは1人もう歳さ。女の子は契約している店から呼ぶ。部屋は5つあるが2階の3室は今一人が専用で使っている」
と2階の階段を上がる。
「今は一番奥の部屋を使ってるな?」
と独り言を言うように戸を開ける。
「今日で5日め、7人呼んだがこの子が気にいっているようや」
 長い髪の女のお尻が見える。女が上に跨っている。男のものがしっかり膣に埋まっている。
「あの薬を飲むといつまでも立つようだな?」
 私はゆっくり表に回る。東が得意のドラックを飲ませたのだ。
「来た時からこの調子ですか?」
「やはり女の人が連れてきたがその時もこの調子さ」
 完全に室長は白目を剥いている。だが女も涎を流している。女も飲んだようだ。どうも相当な金を渡してここに置いているようだ。すでにここに来る前からドラックを飲ませていたのだろう。あの最年長の同僚が死んだ時と似ている。
「連れて来た女はこんな顔でしたか?」
「違うな?短髪で20歳台に見えたな?」
 この頃は東は尾骶骨にひびが入っていて抱かれる状況ではなかった。
 その時メールが入ってきた。女の顔が映らないように室長を撮って送ってとある。送ってもう一度見るとこの女の尻は東の尻に似ている。

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夢の橋14

 07, 2017 07:22
 室長は無断欠勤で解雇された。その後室長の名を伏せて週刊誌に小さな枠に呟きのような記事が出た。もちろん私も気づかなかった。私なその日銀行に不良債権の進捗報告を室長に代わり持って行った。これも昔は室長の仕事だった。2時間の説明を終えて銀行を出るとメールが入っていた。すぐに来るようにと検査部長からの呼び出した。
「この記事はどういうことだ?」
 検査部長の横に社長が座っている。週刊誌を投げ出された。私は素早く目を通した。会社名は伏せ字で不良債権が総理の政治資金にと書かれている。
「初めて見ました?」
「雑誌社に聞いたがフリーの記者の持ち込みで取材相手は不明と言うことだった。だがこの文章は室長が書いていた最後の報告書のコピーだ」
 東が攻撃を開始したのだ。
「早急に室長の所在を調査するのだ」
 追い立てられるように廊下に出た。だがその間にまた会長からのメールが入っていた。すぐに上に上がって来いとまるで行動が見張られている感じだ。会長室に入るとまたあの総理秘書が出てくる。部屋に入るとテーブルにやはりあの雑誌が置いてある。会長は茹蛸のような顔をしている。
「まさか社長ではないな?」
「今聞かれましたからそれはありません」
「東だな?」
 東は社長と会長の親子関係に火をつけている。
「今から条件を聞いてくるのだ」
 なぜ行かないのですか?と心の中では思っている。だが黙って外に出ると東の携帯にかける。彼女は笑いながらベンチャークラブにいると言う。有楽町から15分ほどで着く。私の後ろにサングラスの男が付いてきている。
「やり過ぎだぞ」
「戦争よ」
「条件を出してくれと言っている」
「まだ出さない。ここに寄ってきて?」












夢の橋13

 06, 2017 06:37
 朝目を覚ますと総司がいない。李の姿もない。庭から鋭い気合が聞こえる。襲撃を思い出して庭に飛び出す。そこに立っているのは真剣を構えた総司と斎藤一だ。李が立ちすくんでいる。これは割って入れる間合いではない。二人とも上段に構えている。静止しているようで少しづつ動いている。
 一から動いた。遅れて総司が動く。一の剣が総司の頭を真っ二つに割ったかに見えた。だが総司の姿はなく一の降ろされた剣が空を切っている。次の瞬間総司の剣が一の首で止まっている。
「いつか総司と真剣で勝負したことがあった。今の総司はその域に来ている」
「殺し合いは止めてくださいよ」
 私は不平を言った。
 その後久し振りに新聞社に顔を出した。新聞社は部屋が一回り大きくなっていた。隣の部屋を借りて拡げたようだ。私が座っていた席には見知らぬ女性が座っている。
「玄道編集長は?」
「隣の部屋ですが?どちら様ですか?」
「ここに座っていた記者です」
「あの方は朝鮮で殉職されたと?」
「乾、生きていたのか入れ?」
 玄道が抱えるように部屋に招いた。玄道にはトラベラーのことは話していない。机に座ると台紙で閉じれた私の報告書を読み上げた。
「君の仕事は日清戦争の生の声を書くのだ」
「発刊処分になりますよ」
「責任は私が取る」
「席は作ってください」
「この部屋においてやる。編集長付けだ」















夢の橋12

 05, 2017 06:46
 書斎は今は誰も使っていないということで私と総司が入った。夕食には李が鍋を運んできてくれた。しばらくして源内の顔が覗いた。
「元の世界に帰ってしまったのかと残念に思っていたさ」
「死んだらどうなりますか?」
「ここの君は消えるが元の世界の君はそのままだと思うが、博士の見解は元の世界の君も死ぬと言っている。だがどちらが事実なのか分からんよ」
「総司の子供が向こうでできたのですが?」
「調べさせてくれるか?」
と言うなり道具を取りに戻った。カーテンの向こうで総司が下半身を見せている。
「できてないな?と言うことは子供は引き継がないわけだな?」
 出てくると酒を飲む。李は驚いて見詰めている。李は総司を男だと思っていた。そっと総司の手を握っている。
「明日でも質問事項を作るから2人に受けてもらえないか?」
 そう言っていると帽子を手に持った伯爵が戻ってきた。
「生きていたか?」
「はい」
「総司たかは?」
「私が左腕を切り落としました」
「切り落としたか?」
 伯爵はまだたかに未練があるようだ。伯爵も座り込むと酒を飲み始める。夜になっても飲み続けている。李も総司に絡みついている。遂に孫六も徳利を持って入ってくる。
「やはりここの総司と鼠がいないことではのう」











夢の橋11

 04, 2017 06:53
「戻れたな?」
「うん」
 こくりと総司が頷いた。
 会社に出たら検査部長が来ていてお局の室長代行を解いて直轄することを伝えて帰っていた。やはりもう過去の役員には何の力もないようだ。携帯に会長室に11時に来るようにとメールが入っていた。スケジュールに会長訪問として直帰と記録した。
 会長室の前のソファーで15分待たされる。年配の男が鞄を持って出てくる。テレビで見た顔だ。総理の秘書だ。
「入れ」
と会長の声がして中に入った。
「室長が昨夜ママのクラブに行って夜マンションに泊まった」
 まるで張り込んでいたような調査だ。
「やはり、室長はママに資金の絡繰りを教えている。これで君の疑いは晴れたな?」
 疑っていたのだ。だがこれで東が核心の資料を持っていると想像してしまう。これは東の作戦だ。これで会長は二人をマークすることになる。危険は薄くなるわけだ。同時に殺さなければならない。
「ところで検査部長に調査の続行を頼まれたな?それを私に前もって渡してほしいのだ。もちろん要望も出してくれ」
 それだけ言うと会長は慌ただしく出て行った。私は東に連絡をした。東は新しい銀座に店を指定してきた。銀座の外れの9丁目だ。エレベターを上がると華やかなモダンなクラブがある。
「豪勢だな?」
 東のボックスに座る。
「これは前から準備していたベンチャーと組んだ会員制クラブなの。お客はベンチャーの社長で女の子はすべて就職活動中の女子大生よ」
 あの金がそれで必要だったのだ。
「会長が室長が泊まったことを知っていた」
「知らせたようなものだから。室長は私のリスクヘッジよ。隠したわ」
「まさか殺した?」
「まだ役が残っているわ」
 東は怖い奴だ。
「また夢の世界に行けた」
「死んだら私もそこに連れて行って」












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