夢の橋 - トップページ

夜明け前6

 28, 2017 06:11
 相変わらず総司は口をきいてくれない。逆に源内の娘は書斎に来ては私に話しかける。蜘蛛と執事の孫六は相変わらず犬猿の仲だ。孫六は総司を可愛がっている、
 今日は伯爵が新しくできたビアホールに出かける。人力車の前に総司が付き私は後ろから離れて歩く。伯爵は相変わらず政府の要注意人物で私服が2人付いている。戻ってから斎藤一の姿を見ない。川路から罷免されたんだろうか。
 ホールに入ると人ごみの中を2階の席に通される。立派な髭を生やした男が伯爵に握手を求める。この人が板垣退助だ。
「退官したそうだな?」
「ああ、やってられん。京都で桐野にあったらしいな?」
「また耳が早いな?」
「岩倉に睨まれているぞ」
 私と総司は隣のテーブルで壮士達に囲まれてビールを飲んでいる。
「西郷達はどうだ?」
「やはり最後は負ける」
 現在のところ善戦しているような記事が出ている。
「私は政党を作って戦う。もう内乱の時代ではない。力を貸してくれ」
「ああ、私もそう思っている。それで長姉にも援助を依頼してきた」
「今でも長姉殿は天皇家の裏金の金庫番をしているんか?」
「それは遠い昔のことだ」
 私は先ほどから壮士に一人が総司に抱き付いているのを睨んでいる。私は懐の短刀を握った。と同時に総司が大男を投げ飛ばした。大男はいきなり刀を抜いたが総司の剣が首元に当てられている。
「止めなさい。彼は原田左之助を切った男ですよ」
と退助が笑っている。どうやら斎藤一は総司が切ったと噂を流したようだ、
 どうやらこれからは板垣退助と仕事をするようだ。







スポンサーサイト

夜明け前5

 27, 2017 06:16
「君の斜め後ろにいる先輩の報告書だが、新会社の役員の間で問題になっていてね?」
 何時ものように室長に呼ばれている。
「彼は人員整理で戦犯リスト担当ですね?私も整理を手伝いましたから。この赤線の人は戦犯リストから削除されて今は本社の調査部長に栄転と?」
「それがなあ」
と週刊誌を机に置く。離婚訴訟で前代未聞の裏金暴露で慰謝料請求されているとのことだ。
「再調査だ。しばらく直行直帰お構いなしだ」
 ファイルを抱えて部屋に戻る。4時間ファイルを検討して書類調査をする。東が書類を届けるのを見て私も席を立つ。
「もう総司の元へ?」
「いや、少し話ができるか?」
「30分だけなら」
と言って部長にメールを入れて田町のカフェに入る。2人ともビールの小瓶を頼んでいる。
「今日もオフィスでするのか?」
「今日は届けて六本木に行く」
「週刊誌見たか?」
「戦犯調査を受けたのね?私はもう1か月前にそのファイルを見たよ」
「まさか?」
「そのまさかよ」
 それだけ聞いて二人は反対側のホームに上がる。蒲田に着き暖簾を潜る。総司がジャージにピンクのあのエプロンをしてビールの箱を上げている。私は鞄を置くとそれを支える。
「ビール飲みながらノート見てくれる?」
 私はカウンターに立つとウインナーを片手に総司のノートを見る。どうやら夢のことを書き綴っているようだ。
「私鼠に刺されたのよ?」
「怒っている?」
「それが変なの?嬉しかった」




夜明け前4

 26, 2017 05:51
 あの噂で私は総司と気まずい雰囲気になってしまっている。同じ書斎にいて目を合わせない。
「源内、ちょっといいか?」
 私はそっと書斎を抜け源内の実験室に行く。源内はワインを飲んでいるらしく私にもグラスに入れてくれる。
「あの・・・」
「子供を産む件だろう?娘は待ち遠しいと言っていた。博士も楽しみにしている」
「そうは簡単に?」
「子供を産むのに愛がいるかね?私も楽しみにしている。君のように明確なトラベラーのこの世での生命の誕生はまだ記録がないのだ。まずトラベラーというものが明らかになったのが公表されてないからな」
 どんどん学問の方に走っていく。
「亡くなったいや、すでに違う世界に行った黒揚羽は彼女の弁では子を産んだことがない。子を産むと新しい世界に脱皮できないそうだ」
「もしここで子供を産んで帰れないことになるのですか?」
「それも試したいのさ」
 それは困る。私は戻って総司と結ばれたい。
「源内、しばらく鼠の気持ちも考えて保留してやったらどうだ?」
 いつの間にか伯爵が入ってきて自分でワイングラスを握っている。
「彼は未来でも総司と会っている。そして恋心を抱いている。難しい問題だよ。もしだよ。今の村山たかが昔のたかのトラベラーなら私も考えるな」
「それはありますな?」
「源内もトラべーラーならと考えてみるといい。それはそうと君の娘の母親については教えてもらったことがない」
と伯爵が話しているうちに源内の姿が消えている。
「この話をすると科学者源内はどこかに行く」
「伯爵と源内は?」
「一番古いと友ではある。会ったのは30年も前のことになる。頭脳明晰な子供がいると言うことで私は彼に会った。母親が祇園の色っぽい芸子でな。この芸子にはさらに若い夫がいた。だが彼はしばらくして亡くなったその時初めてその夫が芸子の子だと知ったのさ」
 












夜明け前3

 25, 2017 06:58
 源内の娘が書斎に入ってきて耳打ちをする。
「総司のオッパイの横を1センチ突き刺していたわ」
「総司は?」
「執事と手紙を持って出かけたわ」
「怒っていた?」
「逆にニコニコしていたわ。鼠は私と博士のところにこれから行く」
 彼女は何人も子供を産んでいるが見たことがない。
「久しぶりだな?」
とウィリアム博士は機嫌がいい。源内の娘は隣の部屋でお菓子を食べている。私はトラベラーとして用意されたいた質問を1刻も受ける。次に検査を受ける。
「君は向こうで総司を見つけたと言っていたな?」
「誰が?」
 このことは総司以外とは話していない。
「いや、昨日総司をここに呼んだ時に聞いたよ」
「総司が?」
「君は総司と向こうで話したことを覚えているかい?」
「すべてはないですが」
「君はトラベラーとしては成熟している。それで次の実験に入りたいのだ?」
 源内の娘が入ってくる。
「私の検査はあれでいいですね?」
「何をするのです?」
「彼女に君の子供を産んでもらう」
「へえ」
 困ったことにこの話は書斎で噂になっているのだ。

















夜明け前2

 24, 2017 06:49
 戻って伯爵は開かずの間だった2階の寝室に村山たかと上がった。源内は当然と言う風に引っ越しを手伝うように言った。孫六は元執事の玄関の近くの部屋に入った。翌朝私は総司を起こして練習に出た。私は短銃ではなく元々の得意だった短刀を抜いた。
「死ぬよ」
 総司が剣の柄に手をかけた。私の頭の中に一の死ぬ気でと言う言葉が巡っている。自分でも信じれない足が出た。総司の剣が抜かれた。その胸元に入っている。もう真っ暗だ。私の体が宙に舞った。だが私を切り捨てたはずの総司が転がっている。
「あんな短刀使えるのね?」
 総司は目を据えて立ち上がる。だが剣はさやに納まっている。胸に血が浮き上がっている。
「ごめん!」
「たまには鼠も本気出さないとね?間合いが思ったより伸びた。でもかすり傷だから」
「切ってくれ!」
「あれが斎藤一だったら殺されていたよ」
「総司治療してあげる。鼠は伯爵が呼んでいるわ」
 源内の娘だ。彼女も総司が女だと知っている。
 書斎に戻ると伯爵が正装して立っている。
「これから地下道で皇居に上がる。蜘蛛は井戸で見張ってくれ。鼠は書生になれ」
 地下道を抜けると皇居に入った。部屋から岩倉が出てくる。伯爵は軽く頭を下げてその部屋に入る。
「やはり止めれなかったな?」
「はい」
「岩倉と大久保が組むとはな?大久保は攻撃の許可を取る前にすでに熊本城を攻めたようだ。彼らには天皇も何もない。やはり今回野に下った男と会ってくれ?」
「板垣退助ですか?」














WHAT'S NEW?